おはなしのトンネル

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くらべて選ぶ



1月16日~1月19日の日記より

昨日、児童文学講演会 子どもの本~くらべて選ぶ~ へ行ってきました。(講師は平形建一氏)
それについて、印象に残った事などを少しづつ紹介したいと思います。
興味のある方は、どうぞお付き合い下さい。


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その1

導入編
最初は「ちびくろサンボ」の話から始まりました。
ちびくろサンボは、みなさんも良くご存知のお話ではないでしょうか。
私のうちにも、実家から持ってきた自分が子どもの頃よんだ本があります。
でもこの本、少し前までは、本屋さんから姿を消してしまうくらい、いろいろなことで論争になっていたんですね。
その発端は、ある学校のPTAのお母さんたちの話から始まったようです。
あるお母さんが「うちの子『ちびくろサンボ』の本好きなのよね」と言うと「あら!うちもよ」「うちにもあるわよ」となり、
『ちびくろサンボ』の本を持ち寄りました。
ところが、持ち寄ってみてビックリ!お話の内容がみんな違うのです。同じタイトルなのにどうして・・・?
そんな事から始まったのだそうです。

そして、ここで初めて 完訳 省訳と言う言葉を耳にしました。
多分、私が思うには完全翻訳、省略翻訳のことだと思います。

海外の本が日本に紹介される為には、日本語に訳さなければなりません。
その時に、いろいろあるんだと思います。
小さい子ども向けに、簡単にされてしまうものが少なくありません。
小さな子供には、長いお話は向かないという思い込み。
そりゃ~、1歳2歳ではちょっと無理かもしれませんが、それ以上になってくれば、興味深いお話なら聞けると思うのです。
名作絵本というものがありますが、それが絵本の名作であるとは限らないので間違えないでくださいとおっしゃっていました。
簡単に省略されたあらすじにもなっていない本を読んで、読んだ気になって、
本当の本物の作品まで、たどりつかないでいることが問題だと話されていました。
なるほどと思いました。

海外の本が日本語に訳された時に、○○○○作・著などと書かれている場合は、
その方の考えなどが含まれているかもしれません。
○○○○訳と書かれているものは原作をそのまま訳されていると考えられます。
一応の目安にはなると言われました。
気をつけて見てみる価値はあるなぁと感じたし、選ぶ親の目が大事なんだと思いました。(反省)

私たちがよく知っている、イソップ、グリム、アンデルセンなどの童話はどうでしょうか・・・?
本当の正しいお話の方を知っているのかな?それとも・・・?
一度、完訳版を読んでみないといけませんね~。全然違ってたりして・・・(笑)。
(ちなみに、イソップは寓話、グリムは昔話、アンデルセンは創作童話だそうです)

次回は、よく知っている白雪姫のお話をいろいろくらべてみた白雪姫編に続きます。





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その2

今日は 白雪姫編です。

グリム童話集の中の『白雪姫』。これまた有名なお話です。
大雑把なあらすじは、なんとなく、皆さんご存知なのではないでしょうか?
資料の方を頂いたのですが、この白雪姫が原作に忠実かどうかの比較項目のポイントが11あります。

1.書き出しの女王
書き出しは、白雪姫の本当のお母さん(女王)が窓辺で針仕事をしながら、「雪のように白く、血のように赤く、
窓枠の木のように真っ黒な子どもが生まれたらいいのに」と願う場面から始まります。
2.色彩
皆さんが思い浮かべる白雪姫は、どんな感じですか?
髪の色は?肌の色は?
昔話は原色を好むのだそうで、生まれた白雪姫は、雪のように白く、血のように赤い頬や唇、
黒檀のようなに真っ黒な髪をしていました。
金髪や栗毛はありえません。でも私は、どこかで、栗毛の白雪姫にお目にかかったような気がしているのですが・・・。
3.くり返し(鏡・小人)
白雪姫を生んだ女王は、すぐ亡くなってしまいます。
1年後、王様は2度目のお妃をむかえます。
このお妃が鏡に問いかける言葉、後から登場する小人たちの会話は、1度だけでなくくり返し使われています。
4.7歳になった時
白雪姫が森へ追いやられた年齢は、たったの7歳の時だったのです。私は、もっと大きいイメージがありました。
5.肺と肝臓
お妃は、猟人に「白雪姫を森の奥で殺し、証拠として肺と肝臓を持って来て見せなさい」と言います。
しかし、猟人は白雪姫を殺す事が出来ず、代わりに猪の肺と肝臓を持ち帰りました。
6.数字の表現
奇数を好むということがあるそうです。
小人の人数7人、それから白雪姫は3回殺されています。
小人の忠告も3回です。
どの様に殺されたか分かりますか?
7.殺しの方法
1度目は、紐できつく締められて息がつまりぐったり倒れてしまう。
2度目は、毒のあるくしで気を失ってしまう。
3度目は、毒リンゴを食べてほんとに死んで倒れてしまう。
私は、くしとリンゴは記憶にあったのですが、紐は知りませんでした。(もしくは、忘れている)
8.小人の忠告
小人たちは「きみのまま母には気をつけたまえ」「どんな人であろうと、僕たちがいないときに入れてはいけない」
「誰が来ても決して戸をあけないように」と忠告しています。
9.「長い間」の記述
毒リンゴを食べて亡くなった白雪姫は、長い長い間、棺におさまっていました。
いつまでも腐りもせず、まるで眠っているようでした。
10.生き返るところ
毒リンゴを食べてなくなった白雪姫は、どうやって生き返ったのでしょうか?
森に迷い込んだ王子様に抱きかかえられて?いえいえ、くちづけで?
正解は、毒のあるリンゴが喉から飛び出してです。棺をかついでいた、
王子の召使が潅木につまづいた拍子に、棺が揺れてです。
話を読んであ~そうだったと思いましたが、くちづけのシーンが、なぜか頭に浮かびました。

11.結末のスリッパ

お話の最後、白雪姫は王子様と盛大に結婚式を挙げておしまいではありません。
結婚式には、あのまま母も、招かれているのです。
そして、そのまま母のお妃は、真っ赤に焼けた鉄のスリッパを履かされ、
死んで倒れるまで踊り続けるよりほかなかったのです。

ざっと、こんな感じです。
私がもらった資料には、19冊の白雪姫で比較されていますが、11項目すべて正しく書かれていたのはたったの1冊です。
○×△でチェックして、丸が一つもないものもあります。
一体どんな白雪姫なんでしょうか?
かえって、読んでみたい気もします。
創作されちゃったのでしょうか・・・?

みなさんの記憶にあった白雪姫は、どうでしたか?

次回は、桃太郎編です。





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その3

今日は 桃太郎編です。

まず、最初にごめんなさ~い。
かなり煮つまっています。
講師の方が「僕は桃太郎の事をしゃべれと言われたら、3時間はしゃべりますよ~」とおっしゃっておりました。
それぐらい、内容が濃いのだと思います。
ちょっと話を聞いた私が簡単にまとめられるものでは、ないですね。
なので、まとめるのは、ムリです。
印象に残って、覚えている事を、頂いた資料を見ながら、箇条書きします。
あやふやな点も、あると思います。その辺はお許しを~~~。


★代表的昔話『お伽草子』の中にはないので、室町末期以後の比較的新しい話。

★桃太郎の出生には、大きく分けて2つのタイプがある。
 回春型(桃を食べて若返った爺と婆から生まれる・江戸時代の草双紙)
 果生型(川で拾った桃から生まれる・明治以降の作品と口承の昔話)

★その後時代によっていろいろな桃太郎が登場する。( )は鳥越信氏の区分
 ≪江戸時代≫
 町人文化の開花とともに、自由奔放な桃太郎
 ≪明治時代≫
 私たちの知っている桃太郎が形づくられた。(皇子の子)
 ≪大正時代≫
 国家主義の流れに繰り込まれ苦難の始まり。
 大正デモクラシーの中でつかの間の息吹を回復(童心の子)
 ≪大正から昭和≫
 (階級の子)
 ≪昭和戦前・戦中≫
 拡大する戦争の中で、桃太郎は皇軍のシンポルとして、鬼畜米英を叫ぶ巨像として成長。(侵略の子)
 ここが、戦後生まれの私にとっては、とても衝撃でした。
 この頃、桃太郎のハチマキの桃のマークが日の丸に変わったとのこと。
 桃太郎を主人公にした「桃太郎の海鷲」という、日本漫画映画史上、画期的な長編映画があったということ。
 内容は、アメリカの真珠湾軍港を鬼が島とみなし、海鷲ーつまり、海軍航空隊の長であった桃太郎が、イヌ、サル、キジなどの部下を率いて奇襲するというストーリー。
 この映画、高校生だった手塚治虫氏も見て感動したそうです。
 ≪昭和戦後≫
 民話本来の姿に戻る。(民衆の子)

★時代と共に若返る桃太郎
 発生時代(室町?)は、30歳か40歳。
 江戸初期(慶長~寛文)は、30歳程度。
     (元文~寛政)では、25歳ぐらい。
 江戸後期(享和~慶応)は、20歳ぐらい。
 明治(国定教科書)は10代。
 それ以降、講談社版は、10代の眉目秀麗な少年武士。
 小学館育児絵本は、6歳から3歳児
 
 その時代時代によって、描かれた桃太郎は、時代背景の影響を受け、年齢もさまざまに変化してきたんだと驚きました。
 これは、ほんのほんの一部です。
 更に詳しく知りたい人のために、読みやすいものとして
『桃太郎の運命』 鳥越信著 (ミネルヴァ書房)を紹介されていました。
 
 

私のおぼろげな記憶より、ぜひこちらを読んでみてください。
 絵も多く、いろいろな桃太郎に出会えると思います。

次回は、伝記について、少し書きたいと思います。


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その4

前に、読ボラの人たちとこんな会話をしたことが、ありました。
Aさん  「高学年って何読んでいいか良くわかんないんだよね」
私    「そうだね・・・。」
Aさん  「どんなの読んでほしいか、6年生に聞いたら、伝記って言うんだけどどうかなぁ・・・」
Bさん  「伝記は難しいよぉ~。光と影の、光の部分だけ書いたものもあるからね~。」
Aさんと私「ふ~ん。そうなんだ。」

そのときは、そうなんだ・・と思ったけれど、いまいち自分の中でピンとこなかったんだ。
実は私、あまり伝記というものを読んでいないのです。

でも、今回の講演会で少し分かったような気がしました。

   *   *   *   *   *   *   * 

今日は 野口英世編です。

頂いた資料には、野口英世の伝記がずらり・・・。
さすが、お札になるだけの人、いろんな出版社から多くの本が、出ています。
比較の項目として私がおもしろいなぁと思ったのは、≪内容比率≫というもの。
出生や高等小学校時代、渡米、帰国、死去と本全体でどのくらいの割合の比率で書かれているかという項目。
低学年向きの本
15冊ほどで比較してありますが、全体的に見て、4歳までのところで、全体の80%を占めている本もあり、
その他のものでも50~60%です。
やはり、子どもの頃、手をやけどした事を中心に書かれているもの多いのでしょうか?
出生から高等小学校卒までで100%の本がありました。(その後の野口英世はどうなったの~)
年表や業績歴史的背景、生涯史、記述の正確さなどの項目もほとんど×になっています。
中学年向きの本
10冊ほどで比較。低学年向きと比べると、高等小学校卒から渡米、帰国の比率が少し増えたかな。
でも年表や業績歴史的背景、生涯史、記述の正確さなどの評価は△があるものの×が多いです。
高学年向きの本
18冊で比較。出生から4歳までの割合がかなり低くなってきている。(例外はあるが・・)
20%前後が多いかな。その分高等小学校卒から渡米、帰国までの部分が全体の50%近くになっているものが多い。
また死去の部分も割合が低・中学年に比べ増えている。
年表や業績歴史的背景、生涯史、記述の正確さなどの評価も○△が増えてきて×が減ってきている。
中学生向きの本
5冊で比較。高等小学校以前の割合がかなり少ない。
10%いってないものもある。その分、人生の後半に多く触れているのだろう。死去の割合も増えている。
年表や業績歴史的背景、生涯史、記述の正確さなどの評価も○が増え△×が減っている。

以上を考えて見ると、あまり小さいときに伝記を読んでも、その年齢で理解できる範囲の事しか書かれてないということ。
当然といえば当然なんだけど・・・。
伝記という人の人生を扱った本は、ある程度の年齢でないと理解するのは、難しいんだなと感じました。
やはり、簡単にされたものを読んで覚えてしまうと、本格的なものは読まない傾向にあるらしい。

参加されている人から、「何か選ぶときの目安はありますか?」との質問に、
「全集よりは単発でかかれたもの、その人と何かしら因縁があった人が書かれたものなどが良いのでは。」との返答でした。

結局はいろいろ読まないとわからないのかな~なんて思いました。

今日で、児童文学講演会の話は、終わりです。
長いこと、お付き合いいただきましてありがとうございました。

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